どこへ?(Wohin?)

シューベルト作曲 歌曲集「美しき水車小屋の娘」より

 

第2曲 どこへ? (Wohin?)

 

 

岩間の泉から湧いて流れる

快い小川のせせらぎがきこえる、

明るく澄みきって、すがすがしく

小川は谷間をさして流れ下ってゆく。

 

僕の心がどうなったのか、

誰にすすめられたのかも知らないままに、

僕もまた下って行かずにはおれなかった、

僕の旅杖を道づれにして。

 

僕はいよいよ遠く下っていった、

いつも小川の流れに沿いながら

小川はいよいよすがすがしく、

いよいよ明るくさざめいていった。

 

これは本当に僕の行くべき道なのだろうか?

おお、小川よ、教えてくれ、どこへ行くのだ?

お前はせせらぎの音でもって

僕の心をすっかり奪ってしまった。

 

せせらぎだなんて、僕は何をいってるんだろう?

あれはせせらぎの音なんかじゃない。

水の精たちが深い水底で

輪舞を踊りながら歌っているんだ。

 

水よ、わが友よ、歌え、さざめけ、

僕も心たのしくお前について行こう!

水の清い小川のほとりには

きっと水ぐるまがまわっている筈なんだ。

 

 

W.ミュラー詩 (西野茂雄:訳)  

 

 

W.ミュラー詩によるシューベルトの歌曲集「美しき水車小屋の娘」

その第2曲 どこへ?(Wohin?)は、製粉業の親方になるべく修行の旅に出た若者が、はるかな野山に歓呼の木魂を聞きながら、小川のみちびくままに岸辺を下っていくさまをうたった作品。

期待に胸を膨らませ歩みをすすめる様子は、無防備なほどに純粋で、生き生きとした魅力に溢れています。

「鱒」にも通じる生命力です。

 

11/21に神戸酒心館にて演奏予定ピアノ五重奏「鱒」は、ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバスの弦楽器4本にピアノ、という少し珍しい編成の作品のため、コンサートのプログラミング次第では、この一曲だけの参加となる演奏者も。

今回は、せっかくのメンバーが集まる機会だからと、"どこへ?" を同じ編成に書き直したものをプログラムに加えることとなりました。

(演奏会詳細は Concert Activities へ)

 

私にとっては、2008年のリサイタルでピアノソロ版( F.リスト編)を弾いた、思い出深い作品でもあります。

北あおいさんの編曲による今回のピアノ五重奏版は、華やかな演奏効果を狙うのではなく、原曲の持つ雰囲気を保とうとする意図を感じさせてくれるもの。

ガット弦の響きは、この作品本来の素朴な美しさにとてもマッチするような気がしています。